ブランドリポジショニングとは
ブランドリポジショニングとは、ブランドが何を、誰に約束するのか、つまりターゲット、カテゴリー、選ばれる理由を変えることです。ハーバード・ビジネス・スクールのジル・エイヴリー(Jill Avery)氏は、これをブランドの顧客価値提案を書き換えることだと説明しています(HBS Online)。新しいロゴがその一部になることはありますが、ロゴだけならリフレッシュです。ここで役に立つのが、ケビン・レーン・ケラー(Kevin Lane Keller)による古典的な区別です。まだ機能しているブランドは強化し、地位を失ったブランドは新たなブランド・エクイティの源泉を見つけて活性化する、というものです(California Management Review)。
以下の事例は、公開された一次情報または質の高い情報源がある、実際のリポジショニングです。企業が結果を報告している場合は出典とともに示し、信頼できる数字が公表されていない場合はその旨を記載します。
ブランドリポジショニングの事例7選
1. Domino's:問題はピザだと認めた(2009〜2010年)
- 変更前:安くて便利な宅配チェーンでしたが、製品の評判は芳しくありませんでした。
- 変更後:批判を公に受け入れ、よりおいしい味を約束するブランドへ。2009年12月下旬から、生地、ソース、チーズの基本レシピを刷新し、顧客の不満を画面に映し出すキャンペーンを展開しました。
- 報告された結果:2010年第1四半期の決算で、Domino'sは米国の既存店売上高が14.3%増加したのは新しいピザのおかげだとしています(SECへの提出書類)。年次報告書によると、米国の既存店売上高は2008年に4.9%減少し、2009年に0.5%、2010年に9.9%増加しました(Domino'sの2010年10-K)。
- 教訓:リポジショニングが成功したのは、まず製品が変わったからです。キャンペーンはそれを伝えただけでした。
2. Juan Valdez:広告キャラクターからコーヒーショップへ(2002年)
- 変更前:コロンビアのコーヒーを海外で広めるために、コロンビアのコーヒー生産者連合会が1959年に生み出したキャラクター(WARC)。
- 変更後:コーヒーショップとパッケージコーヒーの消費者向けブランド。その運営のために2002年にProcafecolが設立され、2002年12月14日にボゴタのエルドラド空港で1号店が開店しました(Juan Valdez)。
- 報告された結果:Procafecolの2024年の営業収益は8,073億コロンビアペソに達し、2023年から9.8%増加しました(La República)。
- 教訓:リポジショニングによってカテゴリーそのものを変えることもできます。原料の大使から訪れる場所へと変わりながら、人々がすでに信頼していたシンボルは残しました。
3. Dunkin':ドーナツ店から飲料ブランドへ(2018〜2019年)
- 変更前:コーヒーも販売するドーナツチェーン、Dunkin' Donuts。
- 変更後:飲料を中心とした、外出先で手早く買えるブランドになると発表したDunkin'(Dunkin'のプレスリリース)。名称から「Donuts」が外れましたが、ピンクとオレンジの色とおなじみの書体は残り、メニューはエスプレッソとコールドブリューに力を入れました。
- 報告された結果:2019年第4四半期について、同社は過去6年間で最も高い四半期の既存店売上高成長率を報告し、エスプレッソとコールドブリューの貢献を挙げています(SECへの提出書類)。売上には他にも多くの要因が影響するため、証明ではなくひとつの兆候として読んでください。
- 教訓:何を掲げるかを変えるときも、人々が認識している資産は残しましょう。
4. BBVA:複数の現地ブランドから1つの銀行へ(2019年)
- 変更前:メキシコのBancomer、アルゼンチンのFrancés、ペルーのContinental、米国のCompassなど、現地ブランドの集まり。
- 変更後:2019年に全世界で採用した1つのグローバルな名称と新しいロゴ。グループが、よりグローバルでデジタルな1つの銀行として自らを示せるようにするためでした(BBVA)。
- 報告された結果:ブランド変更の効果だけを切り分けた結果で、私たちが検証できたものはありません。
- 教訓:リポジショニングは一貫性のためのものでもあり得ます。名称が1つなら、1つの製品とデジタル体験を国境を越えて展開できます。
5. Gucci:新しいクリエイティブの視点(2015年)
- 変更前:売上が伸び悩んでいたラグジュアリーブランド。
- 変更後:2015年1月に、すべてのコレクションとブランドイメージを担う新しいクリエイティブ・ディレクターとしてアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)氏を任命し、最初のコレクションから明確に新しい美学を打ち出しました。
- 報告された結果:Gucciの売上高は、2015年の38億9,800万ユーロから2019年には96億2,800万ユーロになりました(Keringの2019年決算)。ただし長続きはせず、KeringはGucciの2025年の売上高を60億ユーロ、22%減と報告しています(Kering)。
- 教訓:鋭い新しいポジションはブランドを一変させることがありますが、それでも刷新し続ける必要があります。
6. CUPRA:グレード名から独立したブランドへ(2018年)
- 変更前:SEATのスポーティなラベルで、SEATの各モデルの高性能バージョンに使われていました。
- 変更後:2018年2月に、独自のロゴ、独自のモデル、独自の顧客を持つ独立ブランドとして始動しました(SEAT)。
- 報告された結果:CUPRAの2025年の納車台数は32万8,800台で、32.5%増となり、SEATの25万7,400台を上回りました(Volkswagen Group)。
- 教訓:ブランドの一部を独立したブランドにすることが、最も明快なリポジショニングになる場合もあります。
7. Burberry:ライセンスの乱発から再びラグジュアリーへ(2006〜2014年)
- 変更前:多すぎるライセンスと製品に広がってしまった伝統あるブランド。再建を率いたアンジェラ・アーレンツ(Angela Ahrendts)氏は、ライセンス展開がブランドの独自性を脅かすまでになっていたと書いています(Harvard Business Review)。
- 変更後:ライセンスを減らし、デザインを本社で一元管理し、トレンチコートなど伝統的な中核製品に再び焦点を当てました。
- 報告された結果:2013/14年度の総売上高は17%増の23億3,000万ポンドでした(Burberryの決算発表)。
- 教訓:リポジショニングとは、やることを減らし、ブランドを薄める収入を断ることでもあります。
検証された数字のない有名な事例
Old Spiceの2010年のキャンペーンは、マーケティングの授業で最もよく引用されるリポジショニングです。古くさいデオドラントのブランドが、若い男性と、彼らのためによく商品を購入する女性に向けて語りかけました。戦略は十分に記録されています。しかし、一緒に出回っている売上の数字は主に広告会社や広告賞の資料に由来し、互いに一致しないため、ここでは取り上げません。
これらの事例の共通点
- メッセージだけでなく、製品や体験が変わった。Domino'sはレシピを変え、Juan Valdezは店舗を開き、Dunkin'はメニューを変えました。
- 人々がすでに認識しているものを残した。Dunkin'は色と書体を、Juan Valdezはキャラクターを残しました。
- 特定のターゲットと約束を選んだ。CUPRAはSEATが取り込めていなかった顧客を選び、Burberryは量よりラグジュアリーを選びました。
- 結果には時間がかかり、永続するものはない。Gucciの例は、ポジションは刷新し続ける必要があることを示しています。
リポジショニング、リブランディング、リフレッシュの違い
| ブランドリフレッシュ | リブランディング | リポジショニング | |
|---|---|---|---|
| 変わるもの | ビジュアルの細部、トーン、各種アセット | 名称またはアイデンティティ(両方の場合も多い) | ターゲット、カテゴリー、約束 |
| 変わらないもの | 戦略と約束 | 多くの場合、事業と提供内容 | 通常は、認知されている資産 |
| よくあるきっかけ | 見た目が古びた | 合併、紛争、もう合わなくなった名称 | 新しい市場、新しい競合、機能しなくなった約束 |
| 上記の事例 | 上記にリフレッシュだけの事例はない | BBVAの名称統一 | Domino's、Juan Valdez、CUPRA |
リポジショニングの計画方法
HBS Onlineの記事は、私たちが実務で目にしていることとも一致する4つのステップを示しています(HBS Online)。
- ブランドの健康状態を確認する。顧客は今、何を信じていて、それがどこで不利に働いているか。
- 顧客を調査する。誰を獲得したいのか。その人たちが必要としていて、自社が説得力をもって提供できるものは何か。
- 新しいポジションを定義する。1つのターゲット、1つの約束、それを信じる1つの理由。
- あらゆる接点で実行する。製品、価格、サービス、ウェブサイト、営業資料、看板を、チームが実際に対応できる順番で変えていきます。
4つ目のステップで、多くのリポジショニングがつまずきます。そのため、展開のためのリブランディング公開チェックリストを用意しました。
Dardoにできること
ブランドリポジショニングのサービスでリポジショニングを計画・デザインし、アイデンティティの変更はリブランディングとブランドリフレッシュで対応しています。コロンビアのスタジオを比較しているなら、リブランディング会社の選び方のガイドに、確認すべき質問をまとめています。準備ができたら、ブランドが何を掲げたいのかをお聞かせください。
よくあるご質問
ブランドリポジショニングとは何ですか?
ブランドが何を、誰に約束するのか、つまりターゲット、カテゴリー、選ばれる理由を変えることです。通常は、メッセージやビジュアルアイデンティティだけでなく、製品、価格、体験も対象になります。
リポジショニングとリブランディングの違いは何ですか?
リブランディングは名称やアイデンティティを変えます。リポジショニングはブランドのターゲット、カテゴリー、約束を変えるもので、名称やアイデンティティはそのままの場合もあります。両方を行うプロジェクトも多くありますが、解決する課題は別です。
企業はどんなときにブランドをリポジショニングすべきですか?
今の約束が機能しなくなったときです。新しい市場やターゲット、新しい競合、変化した製品、足かせになっている評判などがその例です。見た目が古びているだけなら、たいていはブランドリフレッシュで十分です。
リポジショニングは必ず成功しますか?
いいえ。結果が報告されている事例では変更後に成長が見られますが、売上には他にも多くの要因が影響し、2025年のGucciの業績が示すように、成果が薄れることもあります。
出典・参考資料
このページの出典です。詳細は各発行元の原典をご覧ください。
- HBS Online:ブランドリポジショニング(英語)online.hbs.edu
- Keller「Managing brands for the long run」(California Management Review、1999年、英語)cmr.berkeley.edu
- Domino'sの2010年第1四半期決算(SEC、英語)sec.gov
- Domino'sの2010年年次報告書、Form 10-K(SEC、英語)sec.gov
- Juan Valdez:私たちの歴史(スペイン語)juanvaldez.com
- WARC:Juan Valdezキャンペーン(英語)warc.com
- La República:Procafecolの2024年の売上高(スペイン語)larepublica.co
- Dunkin'のプレスリリース、2018年9月25日(英語)news.dunkindonuts.com
- Dunkin' Brandsの2019年第4四半期決算(SEC、英語)sec.gov
- BBVA、世界でブランドを統一(2019年、スペイン語)bbva.com
- Keringの2019年通期決算echanges.dila.gouv.fr
- Keringの2025年決算(英語)kering.com
- SEAT:CUPRAの発表(英語)seat.com
- Volkswagen Group:SEATとCUPRAの2025年の納車台数(英語)volkswagen-group.com
- Harvard Business Review:老舗の英国ブランドをグローバルなラグジュアリーブランドに変えたBurberryのCEO(英語)hbr.org
- Burberryの2013/14年度予備決算(英語)investegate.co.uk
